投資、ビジネス、いや、社会において、一番、要求されている、必要とされている資質はなんでしょうか。
私は、間違いなく、忍耐強さだと答えたいです。別に、他人より優秀である必要があるとはまったく思いません。
ところが、この忍耐強さには、何種類か、特徴があります。忍耐強さは、いろいろな形をとるのです。
教師や親が子供に忍耐強く、しつけや学業を教える。これは、patienceです。
to be patient with someone
誰かに対し、忍耐強さを発揮する。
この忍耐強さの反語は、
short-tempered
短気
です。
lose one's temper
カッとする《俗語で言う、キレる感じ》
be short with someone
誰かに対し、短気を起こして、失礼な態度をとる
たとえば、私自身は、もともと忍耐強くありません。どちらかというと短気で、なにかトラブルがあると、スグ、「ちぇっ」っと、思ったり、顔に出してしまうタイプです。
まったく長所ではありません。
反面、一概に悪いとばかりも言えず、単にせっかち、迅速に行動する力があるといっただけの話なら、まともなビジネスパーソン、特に責任が多い方は、大体、私以上に「短気」のはず。子供をもたれている親御さんなども、「子供に料理や片づけを教えるくらいなら、面倒だから、自分がやってしまって、、、」などといった経験を、必ずお持ちのはず。
他方、このように、短気という欠点を持ちながらも、私が、成功する場合は《しない場合も多いですが》、その理由は、目的をギブアップしないことである、ということは、ここ20年の社会人生活で、遅まきながら、学ぶことができました。《学生時代に、こうした姿勢を学ぶことができればよかったのですが、、、》
このギブアップしない、という特質は、錬り強さ、とでもいうのでしょうか。忍耐強さとは、まったく違ったqualityです。
そして、日本語では、必ずしもはっきりしないかもしれないけれど、英語では、忍耐強さと錬り強さは、はっきりと区別されます。練り強さは、perseveranceというのです。
to persevere
何かを練強く達成する
は、当然、すばらしい美徳です。ここで興味深いのは、persevereというのは、結果が出ている場合のことを、通常は意味するということ。
I persevered.
といえば、「苦しかった中を、ギブアップしなかったことで、目的を達成した」という趣旨。
patienceとperseveranceは、二つの性格の違った忍耐強さなので、まったく違う場面で、利用されるわけです。Perseveranceの反対語は、short-temperではなく、よい単語が思いつきませんが、あえて言えば、give up easily《スグあきらめる》でしょうか。
実を言うと、その意味では、よく考えると、patienceと対比される忍耐強さには、persistenceという別の単語を挙げるほうが、先だったかもしれません。
I can be persistent.
といえば、コンテクストに応じて、「俺は、諦めが悪いぜ」といった、相手に対する脅しや捨て台詞にもなりますし、「私は、なかなか、ギブアップしないのよ。がんばるだけよ」といった、perseveranceに向けての決意表明の意味にも、なります。
表面的な辞書には出ていないかもしれませんが、persistentであるという場合は、結果が出ていないのが、persevereとの違い《perseveranceには、形容句もないという違いもあります》。
I am not always patient, but I can be persistent.
といえば、「私は、短気になることもあるけれど、ギブアップすることは、あまりないのよ」といった趣旨になります。
そして、
I am not always patient, but this time, I persevered.
といえば、
「私は、短気になることもあるけれど、今回は、ギブアップすることなく、目的を実現したわ」
となります。
こういう、persevereという言葉の特徴があるため、
I am not always patient, but I can be persevering.
とは、あまり言わないのです。
不思議なもので、日本の文化でも、忍耐については、これを大きな美徳とするカルチャーがありますが、このように、「目的別忍耐」「達成度ごとの忍耐」といった、「忍耐」のカテゴリーについては、ボキャブラリーは、それほど豊富でないような気がします。むしろ、普通、「忍耐」といえば、受動的な感じで、「今、辛抱すれば、経済がよくなるよ」といった、「天気等不可抗力が改善するのを待つ、農耕型の姿勢」をイメージするような気がします。
日本語で、perseveranceに匹敵する言葉というと、正確を期そうとすると「忍耐強い」ではなく、「錬り勝ち」なんかでしょうか。
ちなみに、日本語でも、「短気は損気」といいますが、この場合の短気は、short-temperと、perseveranceのなさを、両方、あわせて、イメージされているように思います。
私の周りの成功する経営者のプロフィールを思い出すと、「短気だけれど、錬り強いタイプ」というのは、結構、「ありがち」な特徴かもしれません。気が短い=気が早く、即断力があるけれど、他方では、中長期の目的を、容易にはギブアップしたりしない、じっくり腰をすえたプランニングもできるタイプの方です。皆さんのご経験では、どうですか?
たかが言葉。されど、言葉。
表面的な英和辞書には、これらの言葉の違いは、そこまではっきり出ていないと思いますが、ビジネスというものを、理解するにあたり、英語を使う使わないにかかわらず、これらのコンセプトの意味の違いをきちんと区別し、自分のライフスタイルの中で、我が物とするというのも、重要なステップだと思いませんか。